
プレキャストコンクリートはCO2排出量削減に寄与できるか?
最近、ある地方公共団体の方から、場所打コンクリートからプレキャストコンクリートに変更することではCO2排出量が削減されるのか?また、どの程度なのか?という質問を受けることがありました。プレキャストコンクリートを採用したいがために、意図的な数値を算定する設計者がいることは事実です。ここでは中立の立場で考察します。
コンクリートの製造には大量のエネルギーが使用され、環境への影響が大きいため、CO₂排出量の削減は重要な課題となります。特に、プレキャストコンクリート(PCa)と場所打ちコンクリートの比較は、施工方法や運搬方法が環境に与える影響を評価するための有益な指標となります。
プレキャストコンクリート(PCa)と場所打ちコンクリートのCO₂排出量
プレキャストコンクリートと場所打ちコンクリートは、それぞれの特性に応じてCO₂排出量に差異があります。以下に、両者のCO₂排出量の試算例を示します。
1. プレキャストコンクリートのCO₂排出量
プレキャストコンクリートは、工場で製造され、現場に運ばれるため、主に以下の要素がCO₂排出量に影響を与えます。
要素 | 内容 |
---|---|
材料使用量 | プレキャストコンクリートに使用されるセメント量(仮定:400kg/m³) |
CO₂排出係数 | セメントのCO₂排出係数(0.92 kg-CO₂/kgセメント) |
材料によるCO₂排出量 | 400 kg × 0.92 = 368 kg-CO₂ / m³ |
輸送によるCO₂排出量 | 10m³のコンクリートを30km輸送(仮定:トラック1台15 kg-CO₂/km) |
輸送CO₂排出量 | 30 km × 15 kg-CO₂/km = 450 kg-CO₂(10m³) |
合計CO₂排出量 | 818 kg-CO₂ / 10m³(材料 + 輸送) |
2. 場所打ちコンクリートのCO₂排出量
場所打ちコンクリートは現場で施工されるため、主に以下の要素がCO₂排出量に影響を与えます。
要素 | 内容 |
---|---|
材料使用量 | 場所打ちコンクリートに使用されるセメント量(仮定:400kg/m³) |
CO₂排出係数 | セメントのCO₂排出係数(0.92 kg-CO₂/kgセメント) |
材料によるCO₂排出量 | 400 kg × 0.92 = 368 kg-CO₂ / m³ |
施工によるCO₂排出量 | 重機やポンプ車の使用(仮定:150 kg-CO₂/日) |
施工CO₂排出量 | 施工期間3日間の場合、3日 × 150 kg-CO₂ = 450 kg-CO₂(10m³) |
合計CO₂排出量 | 818 kg-CO₂ / 10m³(材料 + 施工) |
3. 結果比較
コンクリートタイプ | 材料 CO₂排出量 | 輸送/施工 CO₂排出量 | 合計 CO₂排出量 |
---|---|---|---|
プレキャストコンクリート | 368 kg-CO₂/m³ | 450 kg-CO₂(輸送) | 818 kg-CO₂ / 10m³ |
場所打ちコンクリート | 368 kg-CO₂/m³ | 450 kg-CO₂(施工) | 818 kg-CO₂ / 10m³ |
注釈:
- プレキャストコンクリートと場所打ちコンクリートは、材料に関しては同じ(仮定としてセメント量400kg/m³)であるため、CO₂排出量はほぼ同じです。
- プレキャストコンクリートでは、輸送におけるCO₂排出があり、場所打ちコンクリートでは施工におけるCO₂排出があります。
結論
- 同じ量のコンクリートを使用した場合、CO₂排出量はほぼ同じとなります。
- ただし、実際の現場では、輸送距離や施工方法、使用する重機などによって、CO₂排出量に差が出る場合もあります。
- 環境負荷削減のための改善策として、輸送距離の短縮や、施工の効率化が考えられます。